私の出身小学校には「民族学級」という物があった。
住んでいる所の近くには在日朝鮮・韓国の人たちが住んでいることが珍しくなく、
朝鮮半島出身者の子供たちに、民族教育を受けさせるためのそういう教室があった。
…と、こういう目的だったと知ったのはかなり大きくなってからで、
小学校にいた頃は、「3種類の旗が下げてある変わった教室がある」ぐらいの感覚。
そこの黒板には模様(後にハングルと判明)がいっぱい書いてあった。
黒板の横には知らない土地の大きな地図が下げてあった。
ちなみに3種類の国旗は、日の丸と太極旗、もう一つは赤い大きな星のついた北朝鮮の旗だった。
(と、日の丸以外の意味を知ったのも随分あと。)
正直なところ、朝鮮半島という所に二つの国があるなんて知らなかった小学生だった。
(日本の隣に朝鮮半島があるのも知らなかったかも。)
同級生にも在日韓国・朝鮮人の子が、多分日本の他の地区の小学校からするとかなりの比率でいた。
ただ、彼・彼女らは日本名を使用していたので、ぱっと見は分からないし、
そんなの、子供同士にはあまり関係なかった。
それこそ、北も南も、日本人も韓国・朝鮮人も。
ある日の昼休み、普段は仲の良い体の大きな男の子と小さな男の子が取っ組み合いの喧嘩をしていた。
先生が教室で二人を押さえ、何故喧嘩をしたのか聞くと、
「どっちの国がいいか」が原因だったと答えていた。
体の大きな子は在日韓国人の子供だった。
体の小さな子は在日朝鮮人の子供だった。
普段は普通に仲のいい二人だったのだが、
北と南のどっちが良いかで喧嘩になったらしい。
先生は困った顔をしていた。
普通の日本人の子供だった自分には何が喧嘩の理由かよく分からなかった。
それがとても重いことだったと知ったのは何年も経った後だった。
今日、小泉さんが北朝鮮に行った。
拉致されていた8組11人の消息が発表された。
あの二人はどうしているかなぁと思った。
喧嘩のあと、二人は普通に遊んだりして、仲は特に悪そうではなかったが。